Hare Krishna! The Mantra, The Movement And The Swami Who Started It All (2017)
1960年代に、ハレ・クリシュナ運動をアメリカに広めた、インドのスワミ・cの生涯を振り返るドキュメンタリー映画。
ニューヨークのユニオンスクエア公園を一度は訪れたことのある人なら
このハレ・クリシュナがどんな集団かピンとくるはず。
ユニオンスクエアで、「ハレ〜クリシュナ〜 ハレ〜クリシュナ〜」というインドっぽい音楽とチャントの流れる方角に目をやると、オレンジ色のサリーに坊主頭で、踊るインド人....かと思いきや、主にヨーロッパ系白人集団がくるくると踊りまくっているという光景を目にすることができる。
私も、初めて見たときは衝撃を受けた。
なんだ、インド人じゃないんだ、と。
このドキュメンタリーは、まさにその疑問を解決してくれる良作で、スワミ・スリラプラブバーダがアメリカに渡った当時から、スピリチュアルな文化に精神的な安らぎを探し始めた当時の若者たちに影響を広げていく過程、ビートルズのジョージ・ハリソンとハレ・クリシュナの関わりまで、アメリカにはなかった新しい哲学がどのように受け入れられていったかが、当時若者だった信者たちのインタビューを交えて、臨場感たっぷりに語られる。
何より、インタビューに出ているすでに60代と思われる当時の信者たちが、何より幸せそうにスワミ・スリラプラブバーダのことを語るのが印象的だった。
そして、初老になった今でも40年前の、ハレ・クリシュナ信者の格好をしていたり(今も本格的な信者なのだろうが)、そうでない人も、首に巻いた革のネックレスだったりかすかにヒッピーの面影を残しているところが、いい。
人は好きなことを信じればいいし、何年経っても同じものを好きだっていい。
このドキュメンタリーに出てくる人たちは皆宗教的だが、スピリチュアル的な考え方にそれほど抵抗がなくなった現代に置き換えると、格別おかしなことを言っているようには聞こえない。
そして、個人的にこの映画を観ての最大の収穫は、私がインド文化に入れ込んでいる根本的な理由がわかったことだ。
映画の中で、スリラプラブバーダと信者たち一行が、拠点としていたニューヨークからサンフランシスコへ渡る場面があるが、それは私が10代の時に雑誌で見て以来、影響を受け続けている、サンフランシスコのアレン・ギンズバーグなどのビート文化やヒッピー文化がまさに頂点で栄えていた時代の光景だった。
ビート、ヒッピー、東洋思想、スピリチュアル、インド。
私もその時代にアメリカに生まれていたら、ハレ・クリシュナの信者だったかもしれない。
そういえば、私が昔からオレンジ色の服を好んで着るのはただの偶然だろうか。