2020年1月13日月曜日

Thom Browneのタグとバルセロナ

Thom Browneのタグ


とある会社の人の結婚式の二次会に参加したとき
ある知り合いの男性のスーツの首の後ろから、ぴょんと洋服のタグが飛び出しているのが目に入った。

本来洋服の内側に隠されるべきその赤白青のトリコカラーの小さなタグは
そのメガネをかけた男性の、いかにも頭の回転が早そうで、自分の専門分野に関しては早口でまくしたてそうな雰囲気から、服装に無頓着な人が取り外し忘れた、哀れなタグにしか見えなかった。

時間を持て余した私はワインを飲みながら、その恵比寿のきらびやかなパーティー会場で辱めを受け続けているタグとグレーのスーツ姿の男性をぼーっと数分見つめていて
ようやくそのタグがThom Browne(トム・ブラウン)のものだと気づいた。



ご存知の方も多いだろうがトム・ブラウンのスーツのタグは、本来あってはならない場所に付いている。



これは知らない人からすれば、ある意味、スーツ姿の男性がズボンを腰の位置で履いてパンツを見せながら歩いてるのと同じくらいギョッとする。

なんか、見てはいけないものを見てしまったようなそんな感覚。

そんな訳で、先に挙げた男性が高価なトム・ブラウンのスーツを着ていたというわけだが、その場にいた一定数の人には、タグを切り忘れた服装にだらしない男性と写っていたことは否めない。


トム・ブラウンは、丈が短く細身という、着る人を明らかに選ぶスタイルで、着る人の体型をざっばざっばとふるいにかけていく他に、そのマナー違反の派手なタグをもって、スーツを着るシーン以外のその人の普段の洋服センスをも問いかけているようだ。


ニューヨークのThom Browne


私がThom Browne(トム・ブラウン)の存在を知ったのは、2015年頃、私がNYに住んでいる時に日本にいる友人がNYに遊びに来たついでに、マンハッタンにあるThom Browneの本店に買い物があるというので付き合わされたのが最初だ。

アメリカ生まれのThom Browneがニューヨークを拠点として始めたThom Browneは、アメリカではマイアミとニューヨークのたった2店舗のみで、店舗の大半は中国と韓国に展開。ニューヨーク店は、トライベッカのハドソンストリート沿いにこじんまりとある。

セレブやお金持ちが住み、歴史ある重厚な建物の多いこのエリアにしっとりと馴染む老舗の紳士服店のような雰囲気を醸し出している。

私がThom Browneの歴史も服についても何も知らず、友人とその店を訪れた際にまず思ったのは

「このブランドは、アジアに巨大マーケットがあるのだな」
ということだった。

というのも、その平日の昼下がりに店にいたのは、私たち日本人女性3人と、韓国からの旅行者らしき若い男性2人だけだったから。

トライベッカというマンハッタンの中でも究極にハイソな場所にある紳士服屋に、20代の若いアジア系の客しかいないというのは、かなり違和感がある。

23丁目にある、トム・ブラウンよりよっぽど安価なブルックス・ブラザーズには、日々あらゆる若いエリート風ビジネスマン達が集っていたのに比べると。


なので、直感的にトム・ブラウンは私の中で日本や韓国の若者雑誌で取り上げられている、「これを着ておけば絶対おしゃれ」なブランドの一つとして認識された。


だがそこから数年経って、私の固定概念を変える出来事が起こった。

私の応援するサッカークラブチームのバルセロナが、公式スーツにトム・ブラウンを採用したのだ。

有名人とThom Browne


バスケットボールのNBAの選手をはじめ、昔からスポーツ選手の着るブランドは皆の憧れの的だが、バルセロナの選手達が着るトム・ブラウンもなかなかよかった。




正直言って、バルセロナの選手は他のクラブの選手に比べたらおしゃれな人は少ないものの、その素朴さがトム・ブラウンの少年っぽい遊び心あるスーツにとても馴染む。

あと、やっぱりスペインという土地柄暗めの肌のトーンの多い選手達にトム・ブラウンのグレーが合うなあ。

スペインのバルセロナがなぜアメリカ生まれのブランドを?とも思ったが、そこはアジアにもファンの多いバルセロナの戦略なのだろうか...。


NBAとThom Browne


ちなみにNBAのCleveland Cavaliersがチーム全員で揃いのトム・ブラウンを着たエピソードも有名。

長身で細身の黒人選手にトム・ブラウンのグレースーツは悔しいほど似合う。
短めのスーツ袖から覗く白のカフスがかっこいい。




トム・ブラウンについては今後もっと深く考察して行きたいと思う。

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