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2021年8月9日月曜日

この世は金と数学。映画『マージン・コール』と投資銀行の男の話

とある時期に、投資銀行勤務の男にハマっていた。

投資銀行勤務といっても、タワマンの上層階に住んで女を取っ替え引っ替え、という世間のよくあるイメージとは少し違って、ただたまたま数学が得意でお金も稼げるからその世界に入った、というインド出身の大学院上がりの若者だった。

その若者とはニューヨークで出会った。

友人には、「投資銀行の男なんて結局モデルとフッカーを取っ替え引っ替えの最低野郎になるだけだ」と忠告を受け、

そんな予言も的中し、その付き合いも数ヶ月で終わり、疎遠になった。


5年後、数年ぶりに連絡が入り、聞くと、アメリカの永住権を取得し、職場徒歩圏内のマンハッタンのとあるジム付きマンションで一人暮らしを始めた、ということだった。


5年前は、同郷の友人たちと、ブルックリンの2ベッドルームの部屋に3人で工夫して住み、冬でもビーサン、部屋には謎の数式が書かれた紙が散乱していた、あの男がだ。

初めて会った時、ニューヨーク大学の学生証を少し自慢げに見せていたあの若者が。


色々思うところがあったが、素直に「すごいな」と思った。あのニューヨークの生き馬の目を抜くような環境で、外国人が6年以上生き残っていること。

そして、ジム付きマンション暮らしといっても、きっと服にも家具にも興味がないあの男は、今でもDellのくそ重いラップトップとモニター、職場でもらったタンブラーくらいしか部屋にないだろうと想像もついた。

ドラマ『 Sex and the City』や『Friends』に出てくるようなNYのアパートメント、あるいはマンハッタンの夜景を望めるガラス張りのコンドミニアムの住民は、実際は、数字の強さとタフさを武器に金を稼ぐ、若きウォール・ストリートの金融関係者だったりする。


投資銀行勤務で得られる破格な給料と華やかな生活を羨ましく思うのは簡単だが、その裏で金を生み出す薄暗いマネーゲームは、この映画『マージン・コール』に全て描かれている。



『Margin Call (マージン・コール)』2011


2008年のニューヨークのとある投資銀行で起きたレイオフ(大量解雇)の場面から始まるこの映画は、上級幹部役にケビン・スペイシー、デミ・ムーア、『メンタリスト』のサイモン・ベイカーといった名俳優を揃え、入社1-2年目の若手アナリスト役にザッカリー・クインと、『Gossip Girl』のペン・バッジリーと、しっかりと味のある役者で脇を固め、同じ金融危機を描いた『Big Short (マネー・ショート)』と比べると派手さはないながらも、この時代の金融危機を描いた名作だと個人的に思う。






色んな名シーンがあり書ききれないほどだが、特にケビン・スペイシー演じる部署のトップ、サムが、フロアの8割の人員を大量解雇した直後、残った社員を集めて「This is your opportunity」と鼓舞するシーンは、幹部としての圧倒的な貫禄を見せつけながらも、「このハードな環境で34年間勤めてるあんたこれまでどんな汚いことをして生き残ってきたんや...」という残った若手社員たちの心の声が聞こえるようで、静かなプレッシャーを感じるシーンでもある。

また、むちゃくちゃな戦略を押し付けようとする上司に「Fuck you」と言い放つサムは、頼れる上司としての気骨を持ち合わせているが、最終的にはやはりウォール・ストリートの人間だと思わされる人間性も匂わせ、やはりケビン・スペイシーは名俳優だと納得するしかない。(私生活であんなことがなければもっと今後も幅広くいい映画に出てほしかった...)


名俳優の味のある演技とは別に、個人的なお気に入りシーンは、若手アナリストのピーターとセスが、行方不明のエリックを探す名目でニューヨークのストリップバーで時間を持て余すシーン。




薄暗い店内に淡々と低音のダンスミュージックが流れ、ピーターとセスは、興奮するでもなくただただ無表情でストリッパーを眺めている。

そして、彼女たちの1日の報酬はいくらだろうと、どうでもいいような会話をして酒を飲み時間を潰しているのだが、よく見ると周囲の客も同じように、スーツを来た20代そこそこの男性客で、きっと彼らも金融関係に勤め、仕事で燃え尽きた後の長い夜をこうやって一人静かに欲を紛らわせながら過ごしているのだろうと容易に想像がつく。


この、20代の若者が本来なら興奮する対象である美しい女性たちにも見飽きたとばかりに無感動な表情で、唯一興奮を呼び起こせるのがお金の話、という状況が生々しい。

こういう雰囲気を醸し出すニューヨークのバーと客層が、「うわあ、どこかで見たことがある」と既視感を覚え、とてもリアリティがあった。

ちなみに、ペン・バッジリーは近頃本当にいい役者だと思う。この映画でも、他人がどれくらい稼いでいるかしか興味のない軽薄な若手社員を演じてハマり役だが、Netflixオリジナルの『You』でも文化系やさ男と思いきやとんでもないサイコパス野郎を完璧に演じていて最高だった。


この映画の最後では、生き残れた者と、生き残れなかった者がはっきり示される。

会社のため、保身のために他人を犠牲にした者も、さらに別の他人のための犠牲になり、会社を去る。

そして、2008年に起きた金融危機のその後、2021年までに投資銀行に起こった諸々の大損失事件を知っている私たちの目から見ると、ここで生き残れた者も、きっとその後去る運命になっていただろうことがわかる。


金融業界は厳しい。例え平均の4〜5倍以上の年収がもらえるとしても、絶対に入りたくない世界だし私なら息さえできず片手でひねり潰されると思う。

でも資本主義の本質がここにはあって、頭から否定するだけなら、じゃあ今のお前の生活はどうやってできてるん、ととばっちりを食らうだけだ。

従順に受け入れたくはないが、この金融や経済の仕組みを知らないで通り過ぎると今後の自分の生活も危ぶまれるという危機感を覚えたいい教訓になった映画。

そして、お金と数字にしか反応できなくなった男には、二度と引っかからないようにしようという一番大事な教訓がここにはあった。

2020年5月3日日曜日

プリンセスノキア(Princess Nokia) "Soul Food y Adobo"を和訳してみる

ニューヨーク出身のラッパーで、LGBTQIAのインディーシーンから人気を広げ、2020年2月に4枚目のフルアルバム『Everything Is Beautiful』を発表したPrinces Nokia(プリンセスノキア)。

プエルトリカン系で、ハーレムで育った生粋のニューヨーカーの彼女は、ニューヨークについての曲を複数作っているのだけれど、その中でも特に、特にニューヨークのスパニッシュハーレム / ラテン系コミュニティへの愛を感じる曲"Soul Food y Adobo"をチョイス。





一発目のメロディから、もうニューヨーク。

コーナーにあるデリ、花屋、ランドリー、各国料理のレストランに移民の話す外国語、多種多様な人種のニューヨーカーたち。そんなマンハッタンのストリートをぐんぐん歩いていく情景が思い浮かぶ。

"I love that soul food, adobo
A little mixed with sancocho"

とサビから聞き慣れない単語が並ぶが
adoboもsancochoも、ラテンアメリカの家庭料理の名前で、プエルトリカン系の家庭で、ラテンアメリカ系移民の多いイーストハーレムで育ったプリンセスノキアにとっては地元の味。

イーストハーレムは、90年代に大変物騒な地域として知られていて、ニューヨークに慣れた人でも夜一人で行くのはあまりおすすめしない場所だが、それでも今は安全になったらしい。

私も、ニューヨークに来た当初出会ったプエルトリカン系の女の子に連れられて、夜スパニッシュハーレムことイーストハーレム116丁目でプエルトリカン料理を食べたことがある。

友人のおすすめでバナナのフライやあと数点を食べて、味がおいしいかどうかは正直分からなかったけれど、お世辞にもきれいとは言えないローカルの店で、初めて会った地元のラテン系のにいちゃんや店員も会話に加わって来たりして、ほっこりした気持ちになったのを覚えている。ラテンアメリカ系の人々は、人情深くて、とても温かい。

そんな経験もした関係か、その後プエルトリカンやドミニカン系の住民が多いブルックリンのサンセットパークに住むことになるのだけど、近所のスーパーには、スペイン語のラテンアメリカの音楽がガンガンかかってて、トルティーヤや中南米系の食材が豊富だし、店員もスペイン語で話しかけてくるような場所だった。

そんなラテンアメリカ系のニューヨーク文化に浸りきった私には、この "Soul Food y Adobo"は、まさに私の思い出を掘り起こすような曲で、何度でも聞きたくなる特別な1曲だ。

That Café Bustelo
With milk and sugar to mellow
Know some Caribbean fellows
That get you pregnant by hello
That baby shower, that party
That quinceañera get started
The titis got you, don't worry
So don't you leave in a hurry

カフェ・バステロ*
ミルクと砂糖で甘くしたコーヒー
カリブ系の顔なじみたち
ハローって挨拶一つであんたを妊娠させちゃうような男たち
ベイビーシャワー、パーティー
キンセラネェーラ*が始まる
あのお猿さんたちあんたを手に入れた、心配しないで
でもね、早めに立ち去った方がいいと思うんだ

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 補足情報
カフェ・バステロ*
イーストハーレムにあったキューバスタイルのコーヒーを出すカフェで90年の歴史を持つ。ラテンアメリカ系移民のコミュニティにとって重要な憩いの場でありアイコニックな場所の一つ。

キンセラネェーラ*
15歳になった少女をお祝いするラテンアメリカの儀式。

2020年5月1日金曜日

NYC Bitche$ オークワフィナ(Awkwafina) を和訳してみる

出演者全員をアジア系キャストで固めた映画『クレイジー・リッチ!(Crazy Rich Asians)』や『オーシャンズ8 (Oceans' Eight) 』で唯一のアジア人メインキャラクターとして出演。

人気番組『Sataurday Night Live』ではルーシー・リューに次いで、18年ぶりに二人目のアジア系女性としてホストを担当。瞬く間にスター街道を登り詰めたニューヨーク出身のラッパー・オークワフィナ。






2020年の今では出演作が絶えない人気俳優の一人だけど、そんな彼女が2013年に発表した曲『NYC Bitche$』があまり世の中に知られていないリアルなニューヨークソングとして傑作なので、拙い知識で和訳ならぬ意訳してみたいと思う。

この1曲を聞けば、通好みのニューヨーク観光ができると言っても過言ではない。誰もが知ってる観光地は歌詞に入ってないけど、ニューヨーク在住者が「ああ、分かる」とうなづく人気スポットがいっぱい。そしてディスもいっぱい。

※訳文には、私個人の解釈が含まれています。
* が付いている箇所は、最後にニューヨーク観光情報を補足しています。


[Intro]
Oh my god

Do not look, but that guy has a crack pipe and it's out right now
He's beckoning toward us
Don't drop the subway map, bitch
If you drop the subway map, we're never gonna get outta Queens

[Verse 1]
What's poppin' in the BK, Prospect Expressway
Fuck that museum shit unless it's first Saturday
Bitches be in Bushwick, they all live in Bushwick
They all love Bushwick but I say "FUCK DAT SHIT"
Pull over by the Burg
Hipster pussy market
Feelin' on these vegans despite the smell of armpits
The skinny ones are artists, it's obvious they starving
Your shit art don't pay bills it eats Ramen

[Hook]
New York City Bitch, that's where I come from
Not where I moved to on Mom and Dad's trust fund
New York City bitch, that's how I'm rolling
You out-of-state fakes get your iPad stolen


[Intro]
おっと
見ちゃだめ クラックのパイプ持ってる男がうちらのこと呼んでる
そこの観光客、サブウェイマップ落とすなっての
それなくしてどうやってクイーンズから出るっていうのよ

[Verse 1]
ヘイ、ブルックリン調子どう
プロスペクト高速道路
ブルックリンミュージアム 第一土曜以外はクソ*
ビッチ達はブッシュウィックにいるって*
揃いも揃ってブッシュウィックに住んでるよね
奴らはみんなブッシュウィック大好き
ファック やってられない
スモーガスバーグ*に行ったんだけど
ヒップスターのくそマーケットだわあれ
脇汗の匂いに負けないヴィーガンのアーティストたち*
痩せてる奴ら全員完全にお腹空かせて死にそうじゃん
あんたらのアートなんちゃらは家賃も払えない
買えるのはラーメンだけ

[Hook]
ニューヨークシティ ビッチ、私はここの出身
ママとパパの仕送りで移り住んだんじゃない
ニューヨークシティ ビッチ、私はハイ状態
地方出身の偽ニューヨーカーはiPadでも盗まれろ



[Verse 2]
What exactly is in Red Hook, aside from Ikea
Can I take a train there? No idea
Traffic on Atlantic, bitches stay alien
Yo peep that mess Jay-Z call a stadium
Uptown bro-fest, 20-something douchebags
"Let's get a pint bro, yo where the skanks at?"
East Village poppin', college kids coppin'
Drank too much now the IVs droppin'
West Fourth pizza, stop in front of Joe's
Chillin' with the lezzies outside of the Cubbyhole
Ave of the Americas, driving in the bike lane
Sloppy ass bitches coming out of the PATH train
Bitch, where your pants at? It's 25 degrees out
You eatin' nachos on the block with your pussy out
Queensbridge Projects, Long Island City
Forest motherfuckin' Hills, bitch, get shitty

[Hook]
New York City Bitch, that's where I come from
Not where I moved to on Mom and Dad's trust fund
New York City bitch, that's how I'm rolling
You out-of-state fakes get your iPad stolen

[Verse 3]
No I'm not from Flushing, I wonder why you think that
Citi Field, bitch, where the overpriced drinks at
What's poppin' in the Bronx, Third Avenue Bridge
All the tranny hookers on the point get it in
Blunts in the whip, now we got the munchies
I wonder if the corner store still sell loosies

[Hook]
New York City Bitch, that's where I come from
Not where I moved to on Mom and Dad's trust fund
New York City bitch, that's how I'm rolling
You out-of-state fakes get your iPad stolen

[Outro]
Bitch
Oh my god, oh my god. Wait, there's...
Okay, okay
To your right, there's this Asian girl, she has two live chickens in cages, she just punched a man for a subway seat, and she is coming toward us
This is Awkwafina, bitch. I just stole yo iPad and now I'ma sell it to buy more live chickens



[Verse 2]
イケア以外にレッド・フックに何がある?正直*
電車で行ける場所? マジわからない
アトランティック・アヴェニューの混雑 よそ者たちはずっとよそ者
どんなに悲惨になってるかのぞき見でもしようかな
Jay-Zがスタジアムって呼んでたあそこのね*
アップタウンの男祭り 20代のアホな若造たち
”よう、ビールでも飲もうぜBro このおならの臭いどっから来てる?"
大学時代に飲み過ぎてアイビーリーグを退学
ウエスト4にあるピザ屋 Joe'sの前で立ち止まる
ゲイバーの外でレズビアンたちとチルする*
アベニュー・オブ・アメリカ  バイク専用レーンでサイクリング
PATHトレインの出口から軽そうな女たちが出てくる*
ビッチ、あんたたちのボトムどこ行ったのよ? 外はマイナス3度だっつーの
あんたのアソコ晒しっぱなしでナチョス食ってんなよ
クイーンズブリッジ、プロジェクト*、ロング・アイランド・シティー*
クソなフォレスト・ヒルズ、ビッチども
全員どっか行ってほしい

[Hook]
ニューヨークシティ ビッチ、私はここの出身
ママとパパの仕送りで移り住んだんじゃない
ニューヨークシティ ビッチ、私はハイ状態
地方出身の偽ニューヨーカーはiPadでも盗まれろ

[Verse 3]
いや、私フラッシング出身じゃないから*
うーん どうしてそう思ったのかな
シティ・フィールド、馬鹿みたいに高いアルコール売ってる
ヘイ、調子はどうよブロンクス 
サード・アベニューブリッジ
トランスジェンダーの売春婦たちはみんなそこにいるの
鞭に叩かれて喜ぶアホ面たち みんなまとめてムンク*を食らう
ああそうだ、あのコンビニにまだタバコ売ってるかな

[Outro]
ビッチ
あ、やばい ちょっと待って
はいはい、分かった 分かった
あんたの右の方にアジア系の女の子いるでしょ 
その子二匹のチキンが入った籠を持ってて、そう今ちょうど地下鉄の中の席取りで男を殴った 今こっち向かって来てるじゃん
 私がオークワフィナだっての ちょうど今あんたのiPod盗んだとこ
これ売ってもっと生きたままのチキンを買うんだ


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*補足情報
ブルックリンミュージアム 第一土曜以外はクソ*
第一土曜は無料で入れる。

スモーガスバーグ*
ブルックリンで毎週末行われるオープンエアーのマーケット。人気フードベンダーから古着屋、雑貨屋、アートなど様々な店が出店し非常に競争の高いマーケットとして有名。

ビッチ達はブッシュウィック*
若者に人気のエリア。アンダーグラウンドなクラブやバー、古着屋などがひしめき合う。昔はたいそうな危険地区だったが、多くのおしゃれな白人や若者が移り住んだ結果、安全な場所になった。

脇汗の匂いに負けないヴィーガンのアーティストたち*
ニューヨークはヴィーガンこと究極のベジタリアンが多い。特にアート系やヒップスター(個性重視の格好やライフスタイルをしている人たちのこと。若干軽蔑的な意味で使われる)に多いイメージがある。

イケア以外にレッド・フックに何がある?正直*
レッド・フックは、ブルックリンの西イーストリバーに面するエリア。一見工場地帯のようながらんとした場所だが、近年おしゃれな人が住む場所として人気。

Jay-Zがスタジアムって呼んでたあそこのね*
バークレーズ・センターのこと。ブルックリンの玄関口アトランティック・アベニュー駅に直結している。

ゲイバーの外でレズビアンたちとチルする*
West 4thと呼ばれる駅はマンハッタンのワシントンスクエアパーク近くのグリニッジヴィレッジにあり、ゲイタウンとして有名なクリストファー・ストリート周辺にも近い。

PATHトレインの出口から軽そうな女たちが出てくる*
ニュージャージーとマンハッタンを繋ぐ地下鉄。ニュージャージーは東京に対しての埼玉的な立ち位置のため、生粋のニューヨーカーからすると少々田舎者扱いとなる。

プロジェクト*
低所得者向けの集合住宅

ロング・アイランド・シティー*
クイーンズ内のマンハッタン寄りに位置するエリア。近年再開発され真新しいコンドミニアムが立ち並ぶ ”新しいマンハッタン”になりつつある。

いや、私フラッシング出身じゃないから*
 フラッシングはクイーンズ最大のチャイナタウンがある場所。中国系と見るやフラッシング出身かと聞かれるのは差別的な見方があることを示唆している。

ムンク*
munchiesはスラングでスナックという意味と、BDSMの集会というような意味があるらしい。直前に鞭という単語が出て来ているので、恐らくこの2つの意味をかけていると思われる。


*豆知識1 
ニューヨーク市は、5つの区に分かれていて、真ん中にあるマンハッタンがいわゆるタイムズスクエアやブロードウェイ、ウォールストリート等がある"ザ・シティ"。
ここ20年でカルチャーの発信地からおしゃれな高級住宅街に姿を変えつつあるブルックリン、移民のマルチカルチャーとアートが混合するクイーンズ、荒廃したヒップホップの生まれ故郷からどんどん新しい住民に開発され始めているブロンクス、フェリーでしか行けないスタテン・アイランド。この5つの区で構成されるのがNYC(New York City) となる。

*豆知識2
90年代はお金のないアーティストや移民が住み着く場所だったブルックリンが、今や地方から来たアーティスト志望の学生や外国人、金融/ITのヤングエリートが大量に住み着く場になり観光地と化したため、家賃が数倍に高騰。その土地で生まれ育ったニューヨーカーが家賃を払えなくなり、家を追われるという現象が問題となっている。これはジェントリフィケーション(Gentrification)と呼ばれている。

2020年1月13日月曜日

Thom Browneのタグとバルセロナ

Thom Browneのタグ


とある会社の人の結婚式の二次会に参加したとき
ある知り合いの男性のスーツの首の後ろから、ぴょんと洋服のタグが飛び出しているのが目に入った。

本来洋服の内側に隠されるべきその赤白青のトリコカラーの小さなタグは
そのメガネをかけた男性の、いかにも頭の回転が早そうで、自分の専門分野に関しては早口でまくしたてそうな雰囲気から、服装に無頓着な人が取り外し忘れた、哀れなタグにしか見えなかった。

時間を持て余した私はワインを飲みながら、その恵比寿のきらびやかなパーティー会場で辱めを受け続けているタグとグレーのスーツ姿の男性をぼーっと数分見つめていて
ようやくそのタグがThom Browne(トム・ブラウン)のものだと気づいた。



ご存知の方も多いだろうがトム・ブラウンのスーツのタグは、本来あってはならない場所に付いている。



これは知らない人からすれば、ある意味、スーツ姿の男性がズボンを腰の位置で履いてパンツを見せながら歩いてるのと同じくらいギョッとする。

なんか、見てはいけないものを見てしまったようなそんな感覚。

そんな訳で、先に挙げた男性が高価なトム・ブラウンのスーツを着ていたというわけだが、その場にいた一定数の人には、タグを切り忘れた服装にだらしない男性と写っていたことは否めない。


トム・ブラウンは、丈が短く細身という、着る人を明らかに選ぶスタイルで、着る人の体型をざっばざっばとふるいにかけていく他に、そのマナー違反の派手なタグをもって、スーツを着るシーン以外のその人の普段の洋服センスをも問いかけているようだ。


ニューヨークのThom Browne


私がThom Browne(トム・ブラウン)の存在を知ったのは、2015年頃、私がNYに住んでいる時に日本にいる友人がNYに遊びに来たついでに、マンハッタンにあるThom Browneの本店に買い物があるというので付き合わされたのが最初だ。

アメリカ生まれのThom Browneがニューヨークを拠点として始めたThom Browneは、アメリカではマイアミとニューヨークのたった2店舗のみで、店舗の大半は中国と韓国に展開。ニューヨーク店は、トライベッカのハドソンストリート沿いにこじんまりとある。

セレブやお金持ちが住み、歴史ある重厚な建物の多いこのエリアにしっとりと馴染む老舗の紳士服店のような雰囲気を醸し出している。

私がThom Browneの歴史も服についても何も知らず、友人とその店を訪れた際にまず思ったのは

「このブランドは、アジアに巨大マーケットがあるのだな」
ということだった。

というのも、その平日の昼下がりに店にいたのは、私たち日本人女性3人と、韓国からの旅行者らしき若い男性2人だけだったから。

トライベッカというマンハッタンの中でも究極にハイソな場所にある紳士服屋に、20代の若いアジア系の客しかいないというのは、かなり違和感がある。

23丁目にある、トム・ブラウンよりよっぽど安価なブルックス・ブラザーズには、日々あらゆる若いエリート風ビジネスマン達が集っていたのに比べると。


なので、直感的にトム・ブラウンは私の中で日本や韓国の若者雑誌で取り上げられている、「これを着ておけば絶対おしゃれ」なブランドの一つとして認識された。


だがそこから数年経って、私の固定概念を変える出来事が起こった。

私の応援するサッカークラブチームのバルセロナが、公式スーツにトム・ブラウンを採用したのだ。

有名人とThom Browne


バスケットボールのNBAの選手をはじめ、昔からスポーツ選手の着るブランドは皆の憧れの的だが、バルセロナの選手達が着るトム・ブラウンもなかなかよかった。




正直言って、バルセロナの選手は他のクラブの選手に比べたらおしゃれな人は少ないものの、その素朴さがトム・ブラウンの少年っぽい遊び心あるスーツにとても馴染む。

あと、やっぱりスペインという土地柄暗めの肌のトーンの多い選手達にトム・ブラウンのグレーが合うなあ。

スペインのバルセロナがなぜアメリカ生まれのブランドを?とも思ったが、そこはアジアにもファンの多いバルセロナの戦略なのだろうか...。


NBAとThom Browne


ちなみにNBAのCleveland Cavaliersがチーム全員で揃いのトム・ブラウンを着たエピソードも有名。

長身で細身の黒人選手にトム・ブラウンのグレースーツは悔しいほど似合う。
短めのスーツ袖から覗く白のカフスがかっこいい。




トム・ブラウンについては今後もっと深く考察して行きたいと思う。

2018年11月3日土曜日

ウィンターソングの女王アリシア・キーズ

昨日ニューヨークの冬のことを書いたあと、私のニューヨークの冬のイメージは、全てアリシア・キーズのPVが原点だと確信した。



Alicia Keys - If I Ain't Got You


最初のピアノを数節聞いたら、もう冬でしょ。

この曲が収められている2枚目のアルバム”The Diary of Alicia Keys"は、2003年にリリースされたが、高校生の時、発売日に即買いしたのを思い出した。

Some people want diamond rings
Some just want everything
But everything means nothing
If I ain't got you, yeah

(ダイアモンドの指輪を欲しがる人もいる。ただ全てを欲しがる人もいる。でもそんなの全部意味がない。あなたの事を手に入れられないなら)

 このサビと歌詞は永遠だな。
アリシア・キーズはこの当時まだ10代。天才としかいいようがない。



Alicia Keys - Fallin'


初めて、この曲の最初の出だしの”I keep on fallin'..."を聞いた瞬間、私は鳥肌が立った。

確かラジオで流れてきて聞いたのだと記憶しているけど、すぐにCD屋に駆け込んだのを覚えている。

その当時、どこかの雑誌で「アリシア・キーズレベル以上に歌が歌える人は、ニューヨークにはゴロゴロいるが....」と書いていたのを今でも覚えているけど、こんな渋い曲が書ける15歳はアリシア・キーズしかいないのだ。

私の永遠のアイドル。永遠のニューヨーカー。
ずっと好き。


2018年11月2日金曜日

ニューヨークの冬とプリンセス・ノキア

11月なのに東京にはまだ全然冬が来なくて、気温が甘っちょろい。



BART SIMPSON & GREEN LINE - PRINCESS NOKIA


日中も常に−5度以下の本当の”冬”をニューヨーク以外で体験したことがなかったから、私の中での”冬”のイメージは全てニューヨークに直結する。

実際、今年の東京の耐え難い、長い夏の間中は、ずっと冬が恋しかった。

PRINCESS NOKIA(プリンセス・ノキア)はニューヨーク出身のプエルトリコ系アメリカ人で、アンダーグラウンドのクィアなラッパーとして抜群の人気を誇る。

このPVに入っている2曲”BART SIMPSON"も”GREEN LINE"も、全ニューヨークロケで、教室の外から見えるのがブラウンストーンの高層ビルというのが、一発でニューヨークと分かる理由。

”GREEN LINE"というのは、マンハッタン東を北から南へ走る地下鉄の6番線のことである。

For $2.50 I could go anywhere I want
Even if they check my bags
I'm hiding weed from the cops
I was on the 6, green line chick
I was on the 6

(2.5 ドルで私の行きたいところはどこでも行ける。警察の奴らが私のバッグをチェックしても、私はマリファナを隠すんだ。私は6番線に乗ってた。6番線の可愛い子。私は6番線に乗ってた)


$2.50はニューヨーク地下鉄の一回の料金のことだが、残念ながら現在は$2.75に値上げしている。悪名高いニューヨークサブウェイ(通称MTA)は容赦なくこそこそ値上げする。


実際ニューヨークの冬は、長くて信じられないくらい寒い。

でも、建物の中はセントラルヒーティングがきいているせいで、ほかほか暖かいし、たまにボイラーが暑すぎて、室内でタンクトップにならざるをえない時が何度かあった。


でも、まあ1年の半分は寒いことに変わりはない。

寒いことを恋しく思うことは今までの人生でなかったけれど、全然寒くならない東京を毎日大した感情もなく過ごしていると、ニューヨークの冬の一つ一つのディテールを細かく思い出している自分に気づく。

細胞の一つ一つが感情を取り戻すような冬をもう一度過ごしたい。


2018年9月21日金曜日

【SAVAGE X FENTY】リアーナが2018年ファッション界にもたらしたもの

2019春夏コレクションより。
リアーナによるSAVAGE X FENTYが革命すぎて、未だ興奮が冷めやまない。

Bad girlによるBad girlのためのBadな下着。
「愛してるリアーナ!」
とブルックリン中の女性が悲鳴を挙げたに違いない。
#Metooムーブメントのシリアスさやその後のスキャンダルの応酬にアメリカ中が少し疲れ切っていた中、リアーナは堅苦しさも過激な主張もない最高のクールさで「全ての女性には価値がある」と表現して見せた。

そこが最高に格好いい。

今回のSAVAGE X Fentyの初コレクションでは、ダンサーやストリートキッズを起用し、熱帯植物園のような空間でのコンセプチュアルなパフォーマンスが話題にもなった。


また、大きなお腹を抱えモデルとして出演したスリック・ウッズが、実はこのショーの間中陣痛に苦しんでいたこと、このショーの終了後まもなく男の子を出産したことも大きな注目を集めた。

このショーでは、あらゆる肌の色や人種、体型のモデルを起用したところに、Fenty Beautyから一貫して変わらない、ファッションと女性のあり方へのリアーナの強いメッセージを感じる。しかもモデル全員がヒップスターでバッドガールなところがいい。



全ての女性が自分の肌の色にあったファンデーションを見つけられるように、というリアーナのメッセージが込められたFenty Beauty by Rihannaのファンデーションはアメリカで大ヒットを飛ばした




FENTY BEAUTY BY RIHANNAさん(@fentybeauty)がシェアした投稿 -
新しいプロダクトが発表になるたびに店頭では売れ切れ必須

自身が手がけたコスメラインFenty Beautyの大爆発的ヒットもさることながら、ファッションと時代を読み取るセンスが高すぎて、最近はヒットメイカーとして神がかっているレベル。

最近は「オーシャンズ8」など映画でも女優として活躍していて、人気ベテラン女優に混じって、キャラ立ちしたストリートスマートを演じ、天性のバッドガールさがここでも光っていた。

どこまでクールなんだリアーナ。

正直、私自身Fenty BeautyやPUMA by Rihannaのコレクションを見るまで、リアーナを時代に乗ってヒット曲を飛ばしている一歌手という認識しかなかったのだが、彼女のプロデュースするものを見てから、歌にも興味を持ち、なぜ彼女がこんなに注目を集める存在なのかがわかった。

正直歌だけだったら他にも上手な人は山ほどいると思うが、リアーナは、恵まれた容姿とセンスを含めリアーナとしての個性が他のどんなに歌の上手い歌手より圧倒的なのだ。

彼女がステージに出てくる、ダンスをする、歌を歌う、言葉を発する。

その全ての一挙手一投足が一流のエンターテイナーとして欠かせない個性と存在感を放っていて、目が離せなくなる。

リアーナの際立ったキャラクターは、このVogueの作ったメイクアップビデオでチェックして。


愛さずにはいられない!

2018年9月17日月曜日

【Freehand New York】アーティストが集まるダウンタウンのホテル・フリーハンドニューヨーク

我慢できずにニューヨークネタです。
このブログは、インドネタオンリーにしようとしましたが、デリーのホテルの話を書いたあと、私の愛するニューヨークのホテルの話を書きたくて仕方なくなりました。

Freehand New York (フリーハンド・ニューヨーク)

フリーハンド・ニューヨーク。
この名前を口に出すだけで、胸がぎゅっと潰れそうなくらい切ない気持ちにさせられます。
私やばい人ですかね?
そうですね、本当に私はこのホテルに恋しているんだと思います。
こんなにホテルを愛したことはいまだかつてない!

ホテルの場所と周辺

Flatiron地区。私のかつての勤務地...!

このホテルのある場所は、マンハッタンのフラットアイロンと呼ばれる地区で、23丁目とレキシントンアベニューの交差する場所にあります。チェルシーとキップスベイの中間です。

雰囲気的には、インテリアショップやレストランなど30代以上向けの落ち着いた店が多く、ミッドタウンほど観光客でざわざわしてなく、ダウンタウンほど学生たちで賑わってもいない、ちょうど中間な感じで雰囲気のいい場所です。

近くにシェイクシャックの本店があることで有名な、マディソンスクエア・パークもあります。

ちなみに、デザインホテルで有名なAce Hotel (エースホテル)もこの近くにありますが、
そこは今あまりに観光地化してしまって、ロビーなど疲れた観光客の溜まり場なので、あまりオススメしません。

フリーハンドニューヨークの魅力

受付
このホテルの一番の魅力といったら、こだわり尽くされたデザインの良さ。
これに尽きます。


私がニューヨーク生活の集大成に泊ったKing room

机とか。ここで生活したい。

ホテルの内装、カフェ、バー、アメニティに至るまで、全てのディティールが
震えるほど格好いい。

2階のカフェへ続く階段。この階段のために死んでもいい...と思えるほど好きだ。

階段の壁にかけられた絵画など


日当たりがよく居心地の良すぎる2階のカフェ。アーティスト達と近所に住む家族がゆったりしたブランチを楽しむ雰囲気

ホテルオリジナルグッズも売っているセレクトショップも併設

カフェにあるバーも夜は盛り上がってます

先ほども触れましたが、私は2年間のニューヨーク生活最終日の記念としてこのホテルに宿泊したのですが、
その時、あまりにホテルのガウンの着心地がよすぎて、なんと自腹で買い上げるというハマりっぷりを見せました。

フリーハンドのガウン。
ホテルマンに「残念ながら新品が品切れだけど、中古だったら半額で出せるよ」と言われ、迷うことなく購入

ふわふわのスリッパもあったり

私実はここにすでに二回泊っているのですが、
二回行っても飽き足らないくらい、最高のサービスと満足感をくれるホテルです。



ちなみにお値段は、一泊25,500〜70,000円ほど。
決して安くはないですが、ニューヨークでいうとすごく高いという訳ではないレンジです。一応4つ星ホテルですので、従業員のサービスの質は高いです。




デザイン好き、ニューヨーク好きの方は、ぜひカフェだけでもいいので訪れてみてください!ますますニューヨークが好きになること間違いなしの空間です。
http://www.booking.com/Share-tzMVTJ