自分の外見によく似た人が身近にいる、と感じるのは、人が自分の容姿に自信を持つ過程でとても重要なことなのだけど、日本ではまだそれが軽視されていると思う。
8月8日土曜日。東京は終日30度超えで、私は1日中、髪のことを考えていた。
一歩外に出れば、汗が噴き出してくるような湿度の高い夏の日は、日本の8月では当たり前で、カールと湿気を含んだボリュームで膨れ上がった私の髪を見て、梅雨の終わりを感じた。
私の髪の毛は、上の表でいうと、2Aと2Bのミックスで、世間では天然パーマと呼ばれている。
生まれた時から髪がまっすぐなることなんてなかった。
ストレートパーマをかけることの魔法を知った10歳から25歳の期間を除いて。
私の育った高知の田舎の小学校でいうと、1クラスに30人くらいいたとして、完全なるウェーブとパーマの髪の人は2-3人くらいで、中高ともっと規模の大きな区域の学校に進んでもその比率は変わらなかったから、多分それが日本の平均だと思う。
私の育った90年代は、安室奈美恵がスーパーストレートのロングヘアーをなびかせて、細い足にニーハイブーツを履いて、TRCみたいなポップなR&Bを歌っていた。
当時友達との会話の中心だったりぼんやちゃおの少女漫画には、ペンで描きやすそうなストレートヘアの女の子が大きな目で元気に愛想を振りまいていた。
友達たちと、少女漫画の絵の描きっこをしていて、皆セーラームーンに出てくるような腰まであるストレートヘアーの女の子の絵を描く中、リーダー格のあいちゃんは、私みたいな髪の子も描いたよ、とゆるくウェーブを描いたショートヘアの女の子の絵を混ぜてくれた。
でも、私はそれを可愛いも思えなかったし、あいちゃんの情けは自分と皆との違いを際立たせた。
ストレートヘアが、日本の可愛いの中心だった。
そのあと大学に進んだ2000年代の後半くらいに、「ゆるふあパーマ」なるものが世間を席巻した。
私が願ってやまなくて、自分独自の科学に基づいて数々の実験を行った(玉ねぎの皮を用いるなど)にもかかわらず手に入れなかったストレートヘアに、あえてパーマをかけて「動き」をつけることでおしゃれに見せようとする取組みが、若者の中で広がった。
掌返しも甚だしい。私はその流行に踵を返して、定期的にストレートパーマをあてて「平常」な髪であろうとした。
ストレートヘアにすることで、やっと、世間の女の子と同じ舞台に立てる気がした。マイナスを0にする行為。
ヘアやメイクで可愛くなるのは、1を10にするんじゃなくて、マイナスを0にすることなのだ、と、日本のファッション雑誌から教わった。
2020年
ヘアやメイクは、1を100にする魔法だと教えてくれる動画をたくさん目にするようになった。
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